言わずもがな。
気が付けば、もう時計の短い針は10になっていて。...時間過ぎるの早過ぎない?なんて、在り来りな文句まで浮かぶ始末だ。
『終わった終わった!』
「お疲れ〜」
『ほんと今日も疲れたね、...あ。電話しなくちゃ』
私服に着替えた彼女は多分(ていうか、かなりの確率で)彼氏に電話する。その間、彼女を独りになんて出来ない俺は帰ることも許されない。
それを見て、苦しいと嬉しいとの感情的には五分五分で。どちらも負けを認めることはないから、少し困る。
『ん、終わった』
『ほんと?ありがとう。
じゃぁ待ってる』
『うん、はい』
短い会話の中にも愛情が伺えて、それには少しだけ胸が痛い...かもしれないが。
『あれ、何か面白いことでもあったの?笑ってる』
「別に〜。どうやっても変えられないこともあるんだな、と」
『...よくわかんない?』
「それでいいよ、ほら暑いから外で待ってよ」
言わずもがな、俺は君が好きで。
君は俺じゃない彼が好き。
それは、変えられることはなくて。俺もそんなのは望んではいない。
困らせるだけの、この感情は言うことはないんだろうけど。――そんなこと思うと少し苦しく、はなるけど。
緩やかに、この恋が冷める日まで。俺は性懲りもなく君に恋をし続けるだろうから。
変わらない、矢印。
それすら、俺には愛しくて。
End.
(切ない、って。
多分こうゆう感情)