恋詠

これは剣道の試合


大丈夫、やれる!!




「やぁぁあああ!!」




次々と向かい来る男たちを切り捨て、いつの間にか私の服は真っ赤に染まっていた




「はぁ…はぁ…」




最後の一人を切り捨てた瞬間、力が抜け地面に座り込む


途端、手が震え出した




「わたし…わたし…」




人を……殺し、たん…だ…


生まれて初めて、人を殺したんだ…




ただ怖くて、真っ赤に染まる手を見るだけで嗚咽が上がってくる




「うぅっ…」




涙が制服のスカートに染みを作る


目の前が涙で歪んで見えた




「だいじょ…ぶ…か…」




先ほどの怪我をした男が私の背中を優しく撫でながら聞いてくる


けれど私はただ頷くことしか出来なくて、ひたすらその問いに頷くだけ




「ここは…危な…い。早く…城、に…」


「………城…?」


「この…近く、に…城が…ある…んだ…。早く…そこ、へ…」




そうだ泣いてなんかいられない


この人は大怪我をしてるんだ


早く手当てをしないと



< 5 / 11 >

この作品をシェア

pagetop