海に行こう


「泣かなくてもいいでしょ、いい雰囲気だったでしょ?」


は?


あれのどこが“いい雰囲気”なの?


「あれ、亮太と広瀬は?」


「あ、なんか二人とも急に来られなくなったって」


「怪しいなー、ま、とりあえず行くかぁ」


雄がそういって、あるきだしたとき、


「あ、おれ忘れものしたー。わりぃ、先いっててくんね?」


いまだ顔をちゃんと見ていなかった佑志が口を開いた。


忘れ物?


「おー。はやくな」


佑志の手にはケータイ。


「いこう、沁織」


ポケットから覗く長財布。


「うん…」


なにか忘れてるようには見えない。


「ごめん、トイレ行きたくなっちゃったー先いってて!!」


我ながら女子とは思えないいいわけだったが、何か言われる前にダッシュで佑志のもとへ駈け出した。


なんでかわかんないけど、隣にいたかった。


< 14 / 32 >

この作品をシェア

pagetop