海に行こう
「泣かなくてもいいでしょ、いい雰囲気だったでしょ?」
は?
あれのどこが“いい雰囲気”なの?
「あれ、亮太と広瀬は?」
「あ、なんか二人とも急に来られなくなったって」
「怪しいなー、ま、とりあえず行くかぁ」
雄がそういって、あるきだしたとき、
「あ、おれ忘れものしたー。わりぃ、先いっててくんね?」
いまだ顔をちゃんと見ていなかった佑志が口を開いた。
忘れ物?
「おー。はやくな」
佑志の手にはケータイ。
「いこう、沁織」
ポケットから覗く長財布。
「うん…」
なにか忘れてるようには見えない。
「ごめん、トイレ行きたくなっちゃったー先いってて!!」
我ながら女子とは思えないいいわけだったが、何か言われる前にダッシュで佑志のもとへ駈け出した。
なんでかわかんないけど、隣にいたかった。