海に行こう
「ま、まって佑志…!!」
「あ?」
最高に不機嫌な顔で振り返ってきやがった。
「なんでいんの?」
「え・・えっとそれは」
“佑志といたいから”なんていえない。
「ゆ、佑志迷っちゃうんじゃないかな―って・・・ははは」
ぴりぴりにひきつった笑顔。
「…バカじゃね」
…そんなことわかってるわぃ!!
「わ、忘れ物って嘘でしょ?」
「うん」
サラっというなよ。
「じゃぁなんで?」
「ん…みて」
佑志が指差した先は、向かいの家の花壇。
1メートル弱ぐらいの、大きくて凛とした花が咲いていた。
「この花がどうかしたの?」
「アガパンサスっていうんだ。6月29日…俺らの誕生日の、誕生花なんだ」
「へー」
いきなり、何?
「花言葉は、恋の訪れ」