執事と共にお花見を。
咲いていた。

弱々しくも、深紅の確かな存在感を持って、その桜は咲いていた。


「良かった……」


――けれど、一際強い風が吹く。


春を全てさらっていくような、桜を全て洗い流して、夏を連れてこようとするような、強い強い風。
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