執事と共にお花見を。
「綺麗だ」


老人は、もう一度呟いた。

そして、目を閉じる。

その目頭には、涙があった。

恵理夜の瞳にも、今にも零れ落ちそうな涙があった。


「ありがとう」


老人は、そう言った。

恵理夜は、涙がこぼれないように頷くしか出来なかった。


桜は、なんとか間に合った――


間に合ったけれど――


< 115 / 128 >

この作品をシェア

pagetop