執事と共にお花見を。
「……世の中に、たえて桜のなかりせば、春のこころはのどけからまし」


春樹の深い声が、あの歌を口ずさむ。


――桜さえなければ、こんなにも心乱されることはない。


まさに、今の恵理夜にぴったりの歌だった。


――いっそ桜もなくて、出会いさえも無ければ、こんな無力感も、悲しみも味わうことはなかっただろうに。
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