執事と共にお花見を。
公園の中にある桜のなかでは、かなりの古木になるのだろう。

その、桜の樹の下。

目の前で起こっている、至極当たり前のことを、春樹は呟いた。

エンジ色のベレー帽が落ちてしまっている。

おそらく、老人が被っていたものだろう。


「眠っているっていう体ではないわね」

「見慣れているといえば、見慣れている光景ですがね」

「私のことを、言っているのかしら」

「解釈は、お任せいたします」


二人は、倒れている老人を前に淡々と会話を繰り広げていた。
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