執事と共にお花見を。
「救急車、15分後には来るそうよ」

「登校時間には、間に合いますね」

「桜の木の下に倒れている老人を助けて遅刻、はちょっと武勇伝になりかねないものね」

「桜の樹の下には、というあの一文に似ていますね」

「誰だったかしら、それを言ったのは」

「梶井基次郎です。桜があんなにも美しいのは、樹の下に死体を隠しているからだという詩ですね」

「桜の樹の下には……」

「死体が埋まっている」


春樹が拾ったその言葉。

恵理夜は、一呼吸置いた後、春樹をはっきりと見つめた。
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