執事と共にお花見を。
「あのご老人は、お嬢様の事を覚えておりました」

「覚えていた?」

「第一声に、『お前か、余計なことを』と言っていましたからね」

「ああ、そう言えば」

「つっけんどんだけなだけの性格の人間が、意識が混濁しているときに運んでくれた人を覚えているでしょうか」

「よっぽど不快だったんでしょう」

「お嬢様は、本当にそう思いますか」


バックミラー越しに、鋭い瞳が恵理夜をとらえる。


「どういう意味かしら」

「あの老人の真意は、本当にお嬢様を不快なだけに思っていたでしょうか」


どこまでも鋭い瞳。
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