執事と共にお花見を。
「貴女の慧眼は、それを真実と見ていますか」


恵理夜は、怒りを鎮めるために目を閉じ、深呼吸をした。

怒りや不快感に支配されていた心が、春樹の言葉に導かれてクリアになっていく。

その静かになった心で、自分の勘が導く答えを見つめる。


「……本心では、無かったわね。悪意は感じなかった」


それが、恵理夜の勘が告げる真実だった。

怒りや不快感に支配されて、老人の本意を無視しようとしていた自分を恥じる。

しかし、春樹は責めることなく満足げに目を細めるだけだ。
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