執事と共にお花見を。
「ベッドの下にいる理由はわかりました。……が、そろそろ出てきてはいかがですか」


と、青年は手を差し出した。


「それもそうね」


恵理夜は、その手に導かれながらベッドの下からはい出した。

しかし、青年の手を握る恵理夜の手は驚くほどに冷たい。

よく見ると顔色も良くなかった。

血の巡らない末端部分に、血色を失った唇――何らかの発作を起こしていたのは明白だった。


「お嬢様、お体の具合でも……」


再生不良性貧血――恵理夜の抱える病の名だ。

日々の薬によって命を支える恵理夜の身体は、いつだって不安定だった。

時には、死を意識することさえあった。
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