執事と共にお花見を。
「生き物を傷つけてはいかんぞっ」


あまりの勢いに、子供たちは半泣きになる。


「自分がされて痛いと思うことを生き物にしちゃいかん。わかったかっ」


あまりの剣幕に、子供たちは散り散りに走っていく。

話に花を咲かせていた母親も、事情がわかったのだろう、バツが悪そうにそそくさと子供と一緒に去って行った。


しかし、老人の目はすでに静かだった。

先ほどの剣幕など、微塵も感じさせないほど静かに佇んでいる。

手を引かれて、あるいは抱きかかえられながら帰っていく親子の姿を、ただ穏やかに見守っている。
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