執事と共にお花見を。
「昔な、ひどく傷つけたんじゃ」

「この桜を?」

「……そうじゃな。それでも、毎年、花を咲かそうとするんじゃ」


その口調はひどく重く、深い悲しみが含まれているように思えた。


「どんなに傷つけられても、何度でも、変らずに花を咲かそうとする……」


桜の話をしているのではない、と恵理夜の勘が告げた。
< 45 / 128 >

この作品をシェア

pagetop