執事と共にお花見を。
週末のせいもあり、たくさんの親子連れも訪れて子供のボール遊びなどに興じる姿も多くあった。

しかし、あの老人は変らずにいつものベンチに座っていた。

そして、恵理夜も、その老人を見守ることのできるベンチに腰をかけていた。


「桜餅をご用意したしましたので、今日は玄米茶にしてみました」


と、春樹は魔法瓶からお茶を注いで手渡した。

香ばしい香りが立ち上る。


「桜餅は2種類用意させていただきました」

「関東風と関西風の2種類?」

「はい。クレープのように餡を包んでいるのが長命寺。お萩のように餡を包んでいるのが道明寺です」

「どちらも、桜の葉の香りがいいわよね」

「ですが、その香りの成分であるクマリンには肝毒性がありますので、摂取のしすぎにはお気をつけ下さい」
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