執事と共にお花見を。
――風が吹いて桜の花が散る。
一斉に歓声が上がった。
「あの桜、やはりまだ開花しませんね」
春樹の目は、老人が守る桜の木を捉えていた。
「あの桜だけ、やけに古いわよね」
「いえ、それが違うんです」
春樹は、ポケットから手帳を取り出しながら言った。
「実は、あれからこの公園の管理と桜祭りを主催している役所に問い合わせました」
「それで?」
「ここの桜は、40年前に一斉に植えられたそうです」
「一斉に?」
「はい。しかも同じくらいの苗木を使ったそうなので、一本だけ古い、というのはありえないそうなのです」