執事と共にお花見を。
「……この間の、桜の緑茶が、飲みたいわね」


ふと、恵理夜の小さなわがままが漏れた。


「ご用意できます。少々外しても?」

「ええ、お願い」


春樹は、一礼して車の止めてある駐車場へと去っていった。


「ねぇあれ、ゴクドーのお嬢様じゃない」


春樹がいなくなると、急に周囲の声がクリアに届きだした。

黒目勝ちの大きな瞳が声の元を探し当てた。
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