執事と共にお花見を。
「……『どんなに傷つけられても、何度でも、変らずに花を咲かそうとする』」


恵理夜の言葉に、老人の白濁した目が見開かれる。


「先日、そう言っていたわね」

「無駄なことだけ、よく覚えとるわい」


老人は、驚きを隠せないながらも毒づく。


「誰のことを言ってるのかしら」

「さぁな」


恵理夜は見逃さなかった。

その目が、花見にはしゃぐ子と、それを見守る母親に向いていることに。
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