執事と共にお花見を。
「あのお爺さんね」


ぽつりと、恵理夜が話し出した。


「桜が咲くのを待っているって言っていたけれど、もっと違うものを待っている気がするの」

「違うもの?」

「誰か、人を待っているような、そんな気がするのよ」

「誰か」

「どんなに傷つけられても、何度でも、変らずに花を咲かそうとする……前にそう言っていたの。でも、それは桜じゃなくて人のような気がしてならないのよ」

「何故、そのように?」

「……子供をね、見ていたのよ」

「……そういえば、そんな現場もありましたね」

「子供を見ている時、とても穏やかな目をしていたわ」
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