執事と共にお花見を。
――恵理夜の祖父は、極道一家の組長《カシラ》だ。

それ故、大きな屋敷があり、時には車で迎えに行かれることもある。

けれど、恵理夜はあくまで女子高生であり、祖父は組長《カシラ》ではなく純粋に家族であった。

そして、恵理夜を主人としている春樹もまた、極道とは関係のない人間だった。

だが、学校生活を送る生徒はそうは見ない。

黒塗りの車で送迎され、スーツ姿の男性を連れて歩けば、それはもう極道の孫という風にしか見ないのだ。

さらに、登校時間は、多くの生徒が一斉に学校を目指す時間だ。

その中を、恵理夜と共に歩くのは、いささかの不安が春樹にはあった。


「今年は、まだお花見していなかったから」


毅然としながらも乞うような、大きな瞳。


「貴女が望むなら」


と、春樹は頭を下げた。
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