執事と共にお花見を。
「それから、一つ気になる話しがあったわ」


恵理夜は、公園の出口を見やった。


「32年前の春、あそこで交通事故があったそうね。子供が飛び出して亡くなったとか」

「何故、それを知っておる」

「献花がね、あったの」

「それがどうした」

「この界隈でお花屋さんは病院のそばの一軒だけ。私、あそこの店主さんとは仲がいいの。そこで、聞いたの」


老人が沈黙する。


「10年前まで、女の人がお供えしていたそうね。それから、10年前の写真」


恵理夜は、桜祭りのチラシを老人に差し出した。


「これ、貴方よね」


写真のほんの一角に、老人であろう姿が映し出されている。
< 75 / 128 >

この作品をシェア

pagetop