執事と共にお花見を。
「これは、私の憶測に過ぎないけれど、話してもいいかしら?」


老人は、やはり押し黙ったままだ。

それを肯定ととった恵理夜は、一息置いて、再び話し始めた。


「おそらく、32年前に無くなった子供は、貴方の子供じゃないかしら。そして、花を供えていたのは、貴方の奥様じゃないかしら」

「何故、そう言いきれるんじゃ」

「さっきも言ったけど、これ、子供の成長を刻んだ跡じゃないかしら。それも、貴方の息子の」


恵理夜は、先ほども示した幹の傷を撫でた。


「この公園で遊んで、この公園で成長を刻んで、そして、この公園を飛び出して、その子は事故にあったと考えてもおかしくは無いでしょう」


恵理夜は、再びベンチに腰を下ろす。
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