誰についてく?
今年の正月、綾香のお守りを一日中させられた信吾に、別れ際、綾香は、
『信吾お兄ちゃん、今日楽しかったね。綾香、大きくなったら、信吾お兄ちゃんのお嫁さんになってあげるから、待っててねっ』
と、信吾の両手をしっかりちっちゃなお手々で包み込んだのであった。
なのに…。
「女なんて、信じられない」
がっかりして2階に戻ろうと立ち上がって行こうとすると、Tシャツが下から引っ張られて立てない。
見ると、綾香が、がっちり両手で握っていた。
「遊ぼ。お兄ちゃん」
やや茶色っぽい髪をゆったりかわいく一つの三つ編みにして、白いブラウスに赤いズボンをはいている綾香は、パッチリ二重の目を細めて、信吾を見上げ、にっこり微笑みかけた。
「…う、うん。遊ぼっか」
すっかりスネていたはずの信吾だが、なぜか、その笑顔に吸い込まれ、思わず頷いた。
「じゃ、ちょっと、公園で遊んでくるから」
と、信吾は家族に言い残して、綾香を連れて近くの公園へ出掛けた。