誰についてく?
「悟郎」
「ん?」
いつものごとく、友人の杉本とつるんで遊んでいると、急に杉本がまじめな顔で悟郎に呼びかけた。
「実はさ…」
「何だよ。『実は』なんて、言っといて、大した事なかったら、怒るぜい」
「…俺、明日から、もうこうやって、悟郎と馬鹿話出来なくなるんだ」
「え?何で?どういうこと?」
悟郎は杉本が何を言いだしたのか、理解出来なかった。
「…俺、留学するんだ」
「っ!りゅ、留学?」
「ああ」
「お前が?」
「ああ」
「冗談だろ?」
「マジ」
「…なんで、そんな急に決まるんだよ」
「前から、決まってたんだ。けど…言い出せなくて、さ…」
「なんだよ、それって。そんなのって、ありかよっ」
悟郎は杉本の突然の告白に自分でもびっくりするほど動揺しまくっていた。
「ごめん」
「ごめんって言われたって…。で、留学って、どこ行くんだよ、アメリカ?」
「うん、アメリカ」
「どのくらい行くんだよ」
「1年」
「ふ~ん。まあ、精々楽しんで来いよ。じゃあな」
悟郎は、そういうと帰ろうとした。
「あっ、悟郎、黙ってて本当、悪かったよ。遊べるの今日で最後だからさ、どっか、行かないか?」
杉本は慌てて、悟郎の後姿に呼びかけた。
「…行かないよ。杉本も明日から行くんだったら、準備があるんだろ。僕に気ぃ使ってくれなくてもいいよ。じゃ、元気でな」
振り返ることなく悟郎はそう言うと、スタスタ歩き始めた。
「悟郎っ!明日、飛行機、1時のだからっ。見送りに来てくれよっ、なっ!」
杉本は離れていく悟郎の後姿に叫んだ。
悟郎は、その声が聞こえないかのように、そのまま歩き去って行った。