誰についてく?
悟郎はパンが焼けたので、新聞を置き、バターを塗り、インスタントコーヒーを入れた。
「飛行機って堕ちることあるんだよな。これに乗ってたら死んでたな、あいつ」
食べ終わると、新聞をひっくり返し、テレビ欄を見る。
「あっ!今日1時から『逆襲のシャア』があるじゃんっ。これ、見たかったんだよなぁ」
ブツブツ言いながら悟郎は新聞を見終えると、部屋へ戻った。
部屋へ戻るとすぐにロックをかけて、ギターを手に取り、合わせて弾いてみる。
が、間違えてばかりなので、すぐにやめた。
「掃除でもするか」
なんとなく始めた掃除だったが、夢中になり、最後は雑巾片手に部屋の隅々まで拭いて回った。
「ふー。疲れた。ん?何時だ今」
悟郎は目覚まし時計に目をやる。
12時を少し過ぎていた。
「えーっ!もうこんな時間!危うく見損ねる所だった」
悟郎は掃除道具を片付けると、テレビの前に座ってスイッチを入れた。
まだ、悟郎の見たい『逆襲のシャア』の一つ前の番組をやっているが、なんかソワソワする気がした。
「トイレ行ってこよ」
トイレに行って戻って来た悟郎だが、まだなんかソワソワする気がする。
その時、昨日の別れ際、後から叫んだ杉本の声が悟郎の脳裏に過ぎった。
『明日、飛行機1時のだから、見送りにきてくれよ、なっ』
「…」
悟郎は、自問自答した。
「悟郎っ。お前にとって大切なのは、『逆襲のシャア』か、それとも、『バカヤロー杉本』か」
悟郎は、グーっと目を閉じ、パッと見開いた。
「もちろん、シャアだよな」
悟郎は、急いで『逆襲のシャア』の録画をセットすると、ダッシュで階段を駆け下り、玄関を飛び出した。
「杉本のバカヤローが突然言うもんだから、心の準備ってもんが、出来ないだろっ。あー!走ってちゃ間に合わないよっ、絶対!あっ!タクシーだっ」
悟郎はタクシーを見つけて手を挙げた。
タイミングよくタクシーは止まってくれたが、悟郎より少し先に立っていた男に、
「おいっ!」
と、呼び止められた。
このまま悟郎を追う方は、
『次へ』へ。
声をかけた男を追う方は、
『7ページ』へ。