誰についてく?

昌広3−1


「もしもし、昌広」

「ああ」

「やーっと、つかまったぁ。この前は、よっくも約束すっぽかしてくれたわねっ!」

電話の向こうで亜弓が叫ぶように話す。

「あたし2時間も待ったのよっ!2時間もっ!一体、何してたのよっ!なんで来なかったのよっ!」

昌広は、やかまし〜と思いつつ、耳から電話を遠ざける。

「何とか言ったらっ!?」

「…どーも、すいませんでした」

昌広は電話を離したままボソッと呟いた。

「はっ?何か言ったの?聞こえないわよっ!」

亜弓の言葉に昌広はムッとして、今度は電話を顔の前に持ってきて、

「悪かったなっ!」

と怒鳴ると、電話を切った。

「るせー女」

電話に向かってぼやくと、昌広はベッドにゴロッと横になる。

電話の向こうでは、

「なんなのよっ、あの男っ!!」

と、亜弓は完璧に頭に血が上っていた。


昌広は、亜弓の方から一方的に、

「今日KIMIOで待ってるから」

と言われた約束など、破ったところで、痛くも痒くもなかった。

「もっといい女、現れないかなぁ」

昌広は天井に張っているセクシーアイドルのポスターを見つめた。
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