誰についてく?
別れた理由は、
「俺、しばらく一人でいたい」
という和也の思いつきのワガママからだった。
その時、女は、
「どーしてっ。嫌いになったんなら、そう言ってくれればいいじゃないのっ!」
と、泣きじゃくったが、そうではなく、和也の単なる思いつきのようだとわかり、
「あたし、和也の気がまた変わる時まで、一人で待っとくからっ!」
と、勝手に和也に誓っていたのだった。
そんな事があったのが、2週間前の事である。
その女がたった今、目の前で、他の男と人混みに消えて行ったのである。
「なんなんだよ、あいつは」
そもそも和也が一人でいたくなった理由は、とある映画館で暇つぶしに見たとりわけヒットもしていない1本の映画だった。
内容は、一人の少年が旅に出ていくつもの苦難を乗り越えて立派に成人していく様子を描いた、ありがちな物だったが、その日、家に帰ると、
『旅行大当り』
の知らせが届いていたので、ビビっと来るものがあり、和也は旅で男を磨く決心をしたのだった。
そして、彼女と別れ、アメリカ西海岸へ出掛け、ついさっき、帰って来たのである。
その結果、和也が男を磨く為に言ったアメリカで手に入れたものと言えば、
「あーっ、やっぱ黒は暑っ。失敗したなーっ」
と、文句を言っている黒装束と…。
和也は、
「今の俺には女はいらねーんだ」
と、今見た元カノを過去に捨て去って、再び歩き出した。
それからどのくらい歩いただろうか。
あまりの天気の良さに、
「あつぃーよー」
と、和也はあたりの日光を独り占めして歩いてる気がしていた。
信号にかかって止まっていると、道の向こうを英字の書いてあるTシャツにブラックジーンズ、手にカバンを持った男子高校生が歩いているのが見えた。
このまま和也を追う方は、
『次へ』へ。
英字Tシャツの高校生を追う方は、
『34ページ』へ。