誰についてく?
和也3−3
和也は信号が青になると横断歩道を渡り、その高校生に近づき、Tシャツの英字を見ながらすれ違った。
「…。ダメだ。全然わかんね」
和也がアメリカで手に入れたものは、
『英語力』
ではなかったようだ…。
それから、またしばらく歩いたが、和也は、ふと立ち止まった。
「俺はただ歩いているだけでいいのか?」
今更である。
「一人でいくとこ…。よし、決めた」
和也は心を決めると今度は目的を持って歩きはじめた。
そして、
「いざっ」
と、入り、
「ちっきしょーっ」
と呟いて20分ほどで出てきたのは、『パチンコ屋』だった。
和也がアメリカで手に入れたものは、
『勝負強さ』
でもなかったらしい…。
仕方なく、再び歩いて歩いていると女子高生が5人タムロしているのが目に入ってきた。
「おっ、なかなかかわいいんじゃねーの。あ、いや、俺は女はいらね…けど、明らかにこっち見てるよな。モテる男は困っちゃうよなぁ」
などと思いながら、サングラスの下で目を細めていると、
「あの人、暑いのにあんな黒着ちゃって、厚くないのかなぁ」
「暑いに決まってんじゃん」
「ガマンしてるのよ。かっこつけちゃって」
「夏はやっぱり白じゃない?」
「あの人、汗ダラダラなんじゃない?」
「キャハハハハっ!」
という女子高生の囁きが耳に入れたくもないのに入ってきた。
「バカヤロ、オメーらに、このセンスがわかってたまっかっ」
和也は、自分を励ますように小声で呟きながら、足速にその場を立ち去った。
和也がアメリカで手に入れたものは、
『黒装束』
しか、なかったのだろうか…。