誰についてく?

「よぉ、和也じゃん」

和也は突然、男に声をかけられた。

「おおっ、池山〜」

声をかけてきたのは、友人の池山だった。

「お前、アメリカ旅行が当たったそうじゃんか」

「ああ。今、そのアメリカから帰って来たとこ」

「へ〜、そりゃいいとこに出会ったら。お土産っ」

と、池山はニッコリ右手な手の平を和也に差し出した。

「み、土産?」

「そ、土産」

「…ない」

「えーっ?特別無くたって、何かあんだろ?キーホルダーとか、菓子とか」

「いや、何にも…」

「他の奴には?」

「誰にも無い…」

「家族には?」

「あるわけない…」

「…。じゃ、またな」

池山は何も無かったように立ち去って行った。

和也は池山の後ろ姿を見ながら、しみじみ呟いた。

「土産なんて、思いつきもしなかったなぁ」

和也がアメリカで手に入れたものは、

『気配り』

でも、

『物配り』

でもなかったようだ…。
< 41 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop