誰についてく?
「よぉ、和也じゃん」
和也は突然、男に声をかけられた。
「おおっ、池山〜」
声をかけてきたのは、友人の池山だった。
「お前、アメリカ旅行が当たったそうじゃんか」
「ああ。今、そのアメリカから帰って来たとこ」
「へ〜、そりゃいいとこに出会ったら。お土産っ」
と、池山はニッコリ右手な手の平を和也に差し出した。
「み、土産?」
「そ、土産」
「…ない」
「えーっ?特別無くたって、何かあんだろ?キーホルダーとか、菓子とか」
「いや、何にも…」
「他の奴には?」
「誰にも無い…」
「家族には?」
「あるわけない…」
「…。じゃ、またな」
池山は何も無かったように立ち去って行った。
和也は池山の後ろ姿を見ながら、しみじみ呟いた。
「土産なんて、思いつきもしなかったなぁ」
和也がアメリカで手に入れたものは、
『気配り』
でも、
『物配り』
でもなかったようだ…。