誰についてく?

和也は再びずんずん歩いていた。

しかし、あんまり暑いので、自動販売機で缶コーヒーを買って、ゴクッゴクッと一気に飲んだ。

「あー、美味いっ」

飲み干して、ごみ箱に缶をポイッと投げて立ち去ろうとすると、カランっとごみ箱に、『入らなかった』音がした。

和也はスススっとさりげなく近寄り、缶を拾い上げると、スコッとごみ箱の真上から確実に入れた。

『マナー』

は、アメリカに行く前から身についていた和也だった。



「そろそろ帰ろ」

和也はやっと家に向かって歩き出した。

ガソリンスタンドの前を通りかかった時、耳に馴染みがある曲が流れているのに気がついた。

「この歌、まだ流行ってんのか。時のたつのって案外遅いんだな」

流れているその曲は、和也がアメリカに行く3日前に発売され、和也は予約して買ってきていたので
アメリカに行くまでの3日間、ガンガンに聴いていた曲だった。

すなわち、まだ発売されて1週間の新曲である。

和也がアメリカで手に入れたものは、

『時差ぼけ』

だけだったのだろうか…。



そんなことないよね、和也くん。






−和也・完−
< 42 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop