誰についてく?
和也は再びずんずん歩いていた。
しかし、あんまり暑いので、自動販売機で缶コーヒーを買って、ゴクッゴクッと一気に飲んだ。
「あー、美味いっ」
飲み干して、ごみ箱に缶をポイッと投げて立ち去ろうとすると、カランっとごみ箱に、『入らなかった』音がした。
和也はスススっとさりげなく近寄り、缶を拾い上げると、スコッとごみ箱の真上から確実に入れた。
『マナー』
は、アメリカに行く前から身についていた和也だった。
「そろそろ帰ろ」
和也はやっと家に向かって歩き出した。
ガソリンスタンドの前を通りかかった時、耳に馴染みがある曲が流れているのに気がついた。
「この歌、まだ流行ってんのか。時のたつのって案外遅いんだな」
流れているその曲は、和也がアメリカに行く3日前に発売され、和也は予約して買ってきていたので
アメリカに行くまでの3日間、ガンガンに聴いていた曲だった。
すなわち、まだ発売されて1週間の新曲である。
和也がアメリカで手に入れたものは、
『時差ぼけ』
だけだったのだろうか…。
そんなことないよね、和也くん。
−和也・完−