誰についてく?

その女の行動に、今度は昌広が驚いた。


「お、お、おっ、俺の、ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ、百万ドルの微笑みが、む、む、む、無視されたぁ〜」

昌広はがっくりうなだれた。

が、ムッとした顔を上げると、もう大分離れてしまった女を再び追った。


そして、追いつくと、

「待てよ」

と、女の肩を掴んだ。

掴まれた方の女は迷惑そうに顔を歪めて立ち止まった。

中は手を離して女の前に回り込んだ。

「…何か用ですか?」

女は投げやり気味に昌広を見た。

「俺とつきあわない?」

昌広は今度こそと、再び満面の笑みを浮かべた。

「…ふぅ」

女は大きな溜め息をついた後、

「つまんない事で、呼び止めないで。私、急いでるんだからっ」

と、昌広をキッと睨みつけると、再び歩き始めた。


昌広の微笑みは一瞬にして凍りつき、首をガクッとうなだれた。

その時、帽子が地面に落ちた。

昌広はゆっくり帽子を拾い上げると、

「ま、これも運命だ」

と、自分に言い聞かせるように呟き、帽子についた僅かな砂をパッパッと払い、フワッと頭に乗せた。

「さて、どこに行くかな」

昌広はもう女を探して歩くのに飽きていた。
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