誰についてく?
昌広3−3
呼ばれて気づいた男は昌広の方を見た。
「俺は、さっきから、ここでタクシーが来るのを待ってんだよっ。なのに、なんで、おめーが先に乗んだよっ」
喧嘩ごしにそう言いながら、昌広は男に近づいた。
が、男の方は、すっかりタクシーに乗り込んで、
「悪い。急いでるんだ」
と、言うと、ドアがバタッと閉まり、タクシーは動き出した。
「あっ!バカヤローっ、止まれよっ。何考えてんだっ、俺が先だろがっ!!」
昌広が男を乗せて行ってしまったタクシーの後ろに向かって叫んでいる間に『空』のタクシーが2台続けて通り過ぎて行った。
「…」
昌広はそれから20分後、やっとタクシーをつかまえて帰り着いた。
部屋に戻った昌広は帽子を元あった所に置き、シャワーを浴びてスッキリするとベッドに寝転んだ。
「なんか、おもしれーことないかなぁ」
ベッドの上でグーッと背中を伸ばして、伸びをしたあと、体を起こして、携帯電話を取り出して、電話をかけた。
女は携帯が鳴ったので、取り出して見る。
「馬鹿じゃないの、この男っ」
携帯に表示された名前は『昌広』、女は真弓である。
真弓は一瞬出て、速攻切った。
「あ、切られた」
昌広は電話を置くと、再びベッドに寝そべった。
「なんか、おもしれーこと、ないかなぁ」
−昌広・完−