ティッシュに涙と少しの残骸
「ハッピーバレンタイン!」

昼飯のカツサンドを中庭のベンチで寒さに耐えながら食べ終えた後、勢いよく美葉から手渡されたでかい箱に少しビビった。

「手作りなんだからね」
『おうっ、サンキュ。つか寒いから中入らね?』
「だめ!早く開けてみて」

なぜわざわざ外なんだろうか。吐き出した息は白色に変わりすぐ消えてゆく。ハート柄の包み紙を破いて箱を開けたらまたハートだった。

「チョコケーキなんだよ、食べてみて」

美葉の右手にはいつの間にかフォークが握られていた。どこから出したんだろう、と考えていたらハートの下の部分の尖っている箇所に突き刺し俺の口元へ持ってきた。

「はい、あ~ん」
『いいって。自分で…』
「あ~ん!!」

美葉が怒ったのでしぶしぶ口を開けてケーキを飲み込んだ。ほろ苦いチョコケーキで少しブランデーが薫った。

『うまい』
「良かった、初めて作った割に上手くいったから私才能あるかもね♪」

昼休みが終わるまで美葉の手からケーキを食べさせられた。嬉しかったけど寒かった…
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