ティッシュに涙と少しの残骸
「…る?猛ってば!」

ハッと美葉の声に我にかえった。

「もう、全然気付いてくれないから勝手に入っちゃったよ」
『悪い、没頭しちゃってさ』

精神医療の本を机の真ん中に積み重ねて置き、美葉が買ってきたカフェオレの蓋を開ける。

「猛いつもカフェオレだよね」

ベッドに寄りかかりジンジャーエールを飲む美葉にそっちだって同じだろ、と呆れ顔でかえしてやる。
美葉の隣に座り肩を抱いた。

「ここ最近猛張り切りすぎだよ、体調崩しちゃうよ?」
『そうか?勉強してると余計な事考えなくて済むから…』
「翔さんの事は余計なの?」

美葉のはっきりと真っ直ぐな言葉にまた胸が傷んだ。

「翔さんは翔さん、猛は猛なんだよ。比べる必要もないし無理に翔さんの身代わりにならなくたっていいんだよ!…猛の辛さや悲しみは私には解らないけど、最近また笑顔が減ったの自分でわかってた?」

涙が雫となって美葉の頬を濡らしながら零れ落ちてゆく。俺は向かい合い美葉の華奢な身体をちょっぴりきつく抱きしめた。
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