ティッシュに涙と少しの残骸
注文を受け取り厨房へと戻って行く店長の背中をなんとなく見てから星流を睨んだ。

【仲良いの?ってか、そんなに怖い顔しないでよ】
『若干常連だからな。いつもひとりで来るから誤解されたし』

すると星流はメニューで口元を隠してフフッと笑って俺の肩越しに店内を見回して耳打ちしてきた。

【デートには向かないお店だね】

と。
星流にアイコンタクトをして水を飲んだ。含み笑いをしながら飲んだから星流の唇のはしっこから水が漏れてつう、と濡れた筋が出来てる。

【もう、やだぁ。笑わせないでよ】
『勝手に笑ってるのは星流だろ』

白い歯をちらりと見せながら笑う星流に胸がチクリと痛くなった。

「はいっ!どうぞ」

うまそうな湯気をたててるラーメンを俺たちの目の前にばん、と自信満々に置かれた。

【わあ、美味しそう♪】
「お嬢ちゃん“美味しそう”じゃなくて“美味しい”んだよ」
『また始まった。食ってもないのに判る訳ねぇじゃん』
「猛は要らねぇんだな?」

ラーメンのどんぶりを取り上げられそうになり慌て謝った。
< 181 / 248 >

この作品をシェア

pagetop