ティッシュに涙と少しの残骸
一足先に麺とスープが星流の口の中へと旅立ち噛みしめながらため息を吐いて店長の顔を見た。

「美味いだろ?」と満面の笑みを浮かべて得意気に唇の端を上げた。星流は無言で頷いて再びラーメンを箸でつかみ食べた。
俺も割りばしをパシッと割ってかぶりつく。

【ふう、お腹いっぱいだぁ】
『よく食うよな。細いのに』
【猛にゆわれたくな―い】

ほんの少し残ってる水を飲んで立ち上がった。俺につられて星流も席を立つ。伝票をレジに持っていき財布から千円札を出した。

「また連れてこいよ。今度はまけてやるから」
『信用できね―』

レシートと十円玉二枚を受け取って財布にねじ込んだ。星流は外で待っていて白い脚がのれんの向こうに覗いてる。

『俺ひとりじゃまけてくんないの?』
「まけてやるのは彼女にだ」

ケチな店だなと悪態をついてのれんをくぐった。
< 182 / 248 >

この作品をシェア

pagetop