ティッシュに涙と少しの残骸
少し人気の少ない場所に移動してしばし花火をみいる。

「さすがに花火は夏だよね~」

訳のわからない感想を言い咲いては散り、咲いては散ってゆく花火を瞳に映してぼんやりと夏の風情を楽しむ。
突然右手を引っ張られミュールが脱げそうになり足を前に出して阻止した。

「どうしたの!?」
「あっち行こう」

なぜか焦って街灯のない場所へ連れ込まれる。

「ここじゃ花火見えないよ」
「花火はもういいだろ」
「えっ…?」

先輩の腕がのびる。
先輩の顔が近付く。
暑いからくっつきたくないんだけどなぁ、なんてこの時は思わない。やっぱり高校生なんだ、と抱きしめられる度に確信する。クラスの男子と体つきが全然違うもん。大人なんだなぁ…ふたつしか違わないのに。

「真雪…」

名前を呼ばれただけで切なくなる。ゆっくりと距離が縮まって自然と目を閉じると
唇に柔らかい感触と確かな温もりが感じられた…
< 42 / 248 >

この作品をシェア

pagetop