ティッシュに涙と少しの残骸
「夏期講習!?」
「そう」
「カキコーシューってかき氷の種類?」

あたしはため息を吐いて頬杖をついた。
此処は店長のアパートで、時刻は22時ジャスト。恋人の新作スウィーツを頂いてる。

「星流ちゃん熱心なんだね」
「両親がしつこくて断れなかったってさ」

夏休みの中盤、星流とは夜しか会えない、しかも週に一回あるかないかだよ!これじゃ普段の方がマシだ。

「オイシクない?」

不機嫌な顔で黙ってるもんだから心配そうにブルーの瞳が覗きこんできたから思わずのけぞった。

「すごい美味しいよ!」
「よかった」

綺麗な顔でにっこりと微笑む彼はまるで美術室に置いてある石膏の像みたいだ。
クリスマスに気持ちがバレた以来、頻繁に店長とメールをするようになって今日はバイト上がりでそのまま愛の巣にお邪魔する事になったのだ。

「辛いね、星流ちゃんも真雪ちゃんも」

なんで星流も辛いんだろう?
あっ…
片想いしてるから、か…

「リックさん、ごちそうさまでした。店長また明日」
「送るよ」

アディダスのスニーカーに足を通してドアノブに手をかけたら店長が優しく声をかけてくれた。
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