一生懸命でした。
「ワタシも新入生なんです」
「え!?
そうなの!?
ごめん!!」
ちょっぴり、ショックを受けた。
制服だって、下ろし立てで綺麗なのに、新入生に見られなかったなんて。
「本当にごめん!!」
その男の子は、必死になって謝ってきた。
「大丈夫ですよ。一緒に行きませんか?」
「うん。ありがとう」
その男の子は、スラリと背が高く、空と桜の背景がよく似合うほど、爽やかだった。
一般的に言えば“かっこよくて、クール”という部類に入るのだろう。
だけど、一瞬だけ見せる、くしゃっとした笑顔に意外性を感じる。
お腹から出ているような低い声は、ワタシの耳に気持ち良く入ってくる。
「ねぇ、名前何て言うの?」
いきなり聞いてきたので、自分の名前が分からなくなり、口ごもった。
「え…っと、神崎千菜(かんざきちな)です」
「神崎さん?」
神崎さん?と言われ、驚いた。
自分の中では、下の名前で呼ばれると思っていたからだ。