少女の始まりと残酷な終焉。

朝。
目覚ましが鳴った訳ではなく、誰かに起こされたわけでも無いけれど、私は自然に目が覚めた。
別に、こんなの普段通り。
そう、普通な、私の朝。

「…んー……」

ベッドの中で伸びをし、ベッド傍の本の上の眼鏡を探る。
側にあったイヤホンのコードが指に絡みついて眼鏡の捜索が困難になり、私は顔をしかめる。

「…今日も…学校か………」

一人、呟いて身体を起こす。
めんどくさいけど行かなくちゃ。
手にとった眼鏡を掛け、もう一度伸びをし、ようやくベッドから降りた。

「ふあぁ…」

眠い。
いつもの事だけど。
昨日だって早く寝たのに何だってこんなに眠いんだろう。
私は顔を洗いに、洗面所へ向かった。

洗面所の鏡に映ったのは、とうの昔に見飽きた自分の顔。
自然と、溜息がこぼれる。
それを振り払うように、私は蛇口をひねった。
冷たくもなく、暖かくもないいつも通りの水道水が、蛇口下に差し出した私の手を打った。

「…普通、普通。……普通、だ…本当に」

テキトーに並んだ音符にテキトーな歌詞を乗せて、私は口ずさむ。
口ずさんでから、あまりの“普通”にまた溜息をついた。

「朝から何回溜息ついてるんだろ…私」

普通って事が、コンプレックスになってきてるような気がする。
私にとっての“普通”は、他人にとっては“違う”のかも、と思う事でいつもやり過ごしてきた。
けど…それだと何だか私は常識外れの変人、みたいな感じがする。
やっぱり普通がいいのかなあ…そんな考えを打ち止めるように、両手いっぱいに溜まった水を顔にぶちまける。


「…、あ」


眼鏡、外してなかった。

何ボーっとしてるんだろ、私。





< 2 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop