月だけが知ってた
軽い気持ちで
「・・・え、っと?」
6月中旬、窓の外に降り続く雨の中。
ワタシの手の平には
まぁるい銀色のわっか。
目の前には頭をボリボリ掻きながら照れくさそうなきみ。
「・・なぁに、これ?」
親指と人差し指でつまんでわっかを覗いてみても、
きみがワタシに渡した意図が掴めなくて
ワタシはやっぱり首を傾げる。
「ペンダントトップ。」
きみはぽつりと口を開いて、
ポッケに手を突っ込んで俯く。
「?」
ますますワタシの手にあることに疑問が走る。
「誕生日だから。・・・気にいらない?」
また、ぽつりときみーー高瀬 紅(たかせ こう)は不安そうに顔をあげる。
・・・ワタシよりうんと年上なのに
高瀬さんはいつも子犬みたいだと思う。
「そんなんじゃないよ。
・・・ただ。」
ただ。