やんちゃ姫と腹黒王子
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『お集まりの皆さま方、大変長らくお待たせ致しました。
我がラタニール王国の、クリスティン・サラ・ルキア様でございます。』
マイクを通しての爺の声はいつもと違い、柄にもなく少し緊張してしまう。
でも、お得意の営業スマイルを貼り付けて手を振れば、「お美しい」「天使だわ」等の歓声が上がる。
この瞬間は結構好きだ。
「皆さま方、本日はお集まりいただき、大変有り難い限りでございます。
大したおもてなしも出来ませんが、最後までお楽しみください。」
私が本日、二時間掛けて覚えた言葉だ。
父上様の表情は少し複雑そうである。
それもその筈。
父上様が昨日私に渡した原稿は五枚ほどあったのだ。
それを二、三行で纏められてしまった。
しかし、娘がしっかりとした言葉を話したことを嬉しく思ってはいるのだ。
普段の私は言葉遣いが悪いのでな。
私が元の席へと戻ると、今度は父上様が立ち上がった。
「えー、サラがここまで大きく無事に育ってこれたのは、他でもない、ぬしらのお陰じゃ。
その為、サラにはこの国の全てを知って貰おうと思っとる。
だから今回はどんなものでもさらに求婚したまえ。
身分など無いのじゃ。」
…爆弾発言。
ちょっと待て。
私はそんなこと聞いてないぞ?
いや、確かに結婚できる歳ではあるが、そんな急にはごめんだ。
「だから本日は、思う存分楽しんでくれたまえ!!」