やんちゃ姫と腹黒王子
よーし、後で父上様には裏切りの鉄拳を喰らわして差し上げよう。
そう決めた私は、席へと戻ってきた父上様にそっと耳打ちをした。
「後でお話がございます。その面をお貸しくださいね。」
「…ちょっとばかり言葉が怖いよ?まぁ、かわいい娘のお願いだから聞くけどさー。」
さっきのスピーチの時とは全く違うが、このふざけた口調は父上様だ。
この方も、私と同じように上手く性格を使い分けている。なんでも、父上様によると、王宮の者は大体そうなるらしい。
…少し不快だ。
「勝手に求婚を許可したことを怒ってんのか?そんなことしたってどーせお前は結婚しねぇじゃねぇか。だからせめて形だけでも機会を作ろうってとこだ。」
「…でも一言ぐらい相談できただろう。」
「いやー、今日話しておこうと思ったんだけどねー。リオンと話が弾んじゃってさ!!」
「やっぱお前抹殺な。」
「い・や!!」
駄々っ子のような言い方で反論する。もう40歳過ぎのおっさんなのに。
「とにかく、私は今誰とも結婚する気はないから!!」
「わぁーってるよ。俺だって可愛い娘をよく知らない相手と無理矢理結婚させる気はねぇしな。」
なんか妙に父親らしいことを言っていてちょっとムカつく。
「じゃあさっさと部屋に戻るから。」
そう言って立ち上がろうとした私を父上様が制す。
「それは駄目でしょー?君に求婚しに来た世界の方々がたくさんいるんだからー。それに、国として見合いをさせておかなくちゃならない相手がいるんだよー」
「はぁ?」
だからそういうのは事前に知らせてほしい限りだ。