やんちゃ姫と腹黒王子




「それでは又後程。」

そう囁いて横を通り過ぎれば、一瞬で顔は林檎のようになってしまった。

本当に男は単純で面白い。


…だがもう飽きた。部屋に帰って寝たい。


「父上様、お相手の方は何処ですか?なるべく早くお会いしておきたいのですが。」

早く部屋に帰るためにな。


「あそこの人だかりが出来ている場所があるじゃろう?きっとあそこに王子はみえる筈じゃ。」


…私の誕生日パーティーで有りながら、私と同じぐらいの人だかりが出来てるとは、礼儀を知らん奴だ。


そんな奴は二人になったときに裏拳でも喰らわして二度と私の前に現れないようにしてやらなくてはな。

そう思い、上品且つ、威圧を含めた足取りで人だかりに向かう。


…だが然し。


女共が王子から一歩も引かない。邪魔で仕方がない。

態(ワザ)となのか態とでないかは見て分かる。態とだ。何故なら女共が此方を見てにやついているからだ。寒気がする。

…王子の顔が全く見えない。これだけ女共が騒いでいるのだから美形は美形なのだろうが。

「…どけ。」

不意に聞こえた冷たい低い声。

言っておくけど私の声じゃないわよ。

恐らく、これは今目の前に現れた王子様のもの。


「きれい…。」

思わず呟いてしまった私の言葉に、王子はすかさず反応した。

「…お前がこの国の姫か?」

お前呼ばわりとかめっちゃムカつくんですけどー。しかもため口なんですけどー。殺してやりたいんですけどー。

…等とは口に出せないので。

「…えぇ。そうですけれど。そういうあなた様はセンリース国の王子でらして?」


平常心、冷静に、美しく。


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