キミが翔ける道
「…言って…引かない?」




「…どうゆうこと?」




グラウンドに顔を向けて、カーディガンの袖を掴んだ手で口元を抑えた。


その姿でさえ、こんな時でさえ“可愛い”と思ってしまう。


秋らしい冷たい風が彼女の涙が伝った頬を乾かす…
透かれた黒髪が軽くふわふわと靡く。



その髪に、頬に、手を伸ばしたい衝動を必死に抑えた。




「…ここから、好きな人見てるって言ったら…」




「………」





愛おしそうに、誰もいないグラウンドを見つめるその横顔に見とれる。


口が開かなかったのはその所為で…




「やっぱり引くか…嫌だよね。気持ち悪いよねぇー。」




へへへっと笑った彼女に「そんなことない」と言えなかった…




とにかく、この時…

僅かな苛立ちと共に、この場に居たらダメだということを頭の中で考えていた。



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