キミが翔ける道
そんな、誰かが通るかもしれない踊り場で、私は彼に聞かれた。




「…何で、机倒れてたの?」




「…ぶつかっただけだよ?」




「違うだろ?…春川さんがぶつかったぐらいじゃあの机は倒れない。俺、机の中にいっぱい入れてるよ?教材。」




そこまで言われると、私も“嘘はつけない”と悟った。


でも彼は私の手をギュッと握って…顔を上げると微笑んだ。




「…無理して言わないでいいから。」




「………」




優しくそう言った彼が、また私の手を引いて階段を降り始める。

私も背を追うようにして彼引かれるがまま足を進めた。



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