幸せの残量─世界と君を天秤に─
「そんなもの。粉砕させておけ」
「えー……」
「言っただろ」
何を?
「簡単には離さないと」
「……、」
そう、でした。
本当、敵わないですよね。
膝の上に戻ると、ぎゅっと抱きしめられる。
体に浸透するように伝わる温もり。
ああ…幸せってこれか。
ストンって心に落ちた。
知らないままでいい、なんて。
本当、ばかみたい。
知ってしまえばそんなの冗談だったとしか思えない。
「巧さん、」
「ん?」
「しあわせ、です」
「当然」
永遠なんてない。
だけれど、これを知らずに生きていくなんて、もうできない。
だから願わずにはいられないんだ。
────…永遠を。