幸せの残量─世界と君を天秤に─


「…な……すよー」


「聞こえねぇよ」


「、だめなんですー…」


駄目って…何が?


「亜優美?」



くっ付いている亜優美の顔を覗き込めば、泣きそうで、笑っているような。

そんな亜優美がいた。


「…どうした?」


「こわ、い」


久しぶりに聞いたその言葉。


虫だろうと、雷だろうと、何一つ怖がらないこいつの。

唯一、怯えるもの。


「…余計な心配などするな」



どこへも、行かない。






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