幸せの残量─世界と君を天秤に─
──…でも、
「ん?」
小さく、小さく呟いた否定の言葉。
それは余りにも弱々しくて、漏らさないように耳を近付けた。
「たくみさんは居なくならなくても、……わたしの未来はわからない」
「、」
真っ直ぐ耳に入ってきた言葉はぼんやりと意識を乗っ取り、されど理解するのに時間はかからなかった。
「ごめん…なさい……」
「…」
「…こんな、こと……言うつもりじゃ………なかっ…た…………の……」
段々と呂律が回らなくなり、
「ほんとは…………」
その言葉を最後に亜優美は俺に体を預けてきた。
「……亜優美…?」
不審に思って顔を覗き込めば、
「寝てる、のか…」
瞼を下ろし、寝息を立てていた。