幸せの残量─世界と君を天秤に─
「おお。意外とおいしそう」
そんな心配は無用だったようで、作ってみると案外イケた。
それにしても、巧さんが風邪なんて珍しい。
あの性格故、忘れることもあるけれど、あの人は一応お医者さま。
知り合って一年。寝不足で貧血気味なんてのはしょっちゅうだけど、本格的に体調を崩すなんて初めて。
火にかけているお粥を見ながら、原因を考える。
お腹出して寝たとか。
……ないか。
巧さんがお腹出して寝るなんて想像も出来ない。
寒い所に居たりして。
……ないな。
だって巧さん寒がりですもん。
まあ、寝不足で免疫力が下がってたってのが妥当か。
なんて呑気に考えていると不意に体に加わった重み。
「ぐはっ」
油断していたものだから、完全に身体の力は抜けていた。
危うく土鍋に頭から突っ込むところだった。
「え、いや…は?」
何が起こった。